「準難民」受け入れの行く末を危惧する(日本国民党情報宣伝局長 金友隆幸)

金友情報宣伝局長

金友情報宣伝局長

準難民とは誰か?

 日本政府はウクライナからの避難民受け入れを進めている。本稿執筆時点の5月5日時点で820人以上の避難民が日本に来ているとされる。

 こうした中で、日本政府は入管法を改正して「準難民」制度の創設を目指すと発表した。

 現行の難民条約「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員、政治的意見」によって迫害を受ける可能性がある人と定義しているが、国家間の紛争を理由に避難した人は、この難民の定義に該当しないというのが、日本政府の立場だという。そのため、「準難民」制度を創設するのだという。

 いままでの日本は、難民受け入れに厳格な姿勢をとってきており、難民認定率は0.2%であったが、これを契機に「準難民」制度を設けることで、外国人の受け入れを拡大させるのではないかと見られる。

いつ帰国させるか不透明な避難民

 そもそも、どのようなウクライナ避難民をどこから、いつまで、どれだけ、どこで受け入れるかの議論や定義も定かではない。

 たとえば受け入れを認める地域の問題だ。ロシアによって侵攻され占領された地域の人に限定するのか、あるいはその危険性が極めて高い地域、またはウクライナ全土からの避難民を受け入れるのか。

 また、ウクライナとロシアの情勢が、一定程度膠着したら帰国してもらうのか、停戦協定が結ばれたら、帰国してもらうのか、それとも平和条約が締結されても、本人が希望すれば、いつまでも在留を認めるのか、何も決まっていない。「大変な時なんだから、そんなこと言っている場合じゃない。可哀想じゃないか」という声があることは、重々承知している。家族と離れ離れになって、命からがら国を追われるウクライナの女性や子供の姿を、報道で見ると同情を禁じ得ない。

 しかし、一時の感情にほだされ、安易に「避難民」を「準難民」として受け入れを十分な議論や用意も無く進めれば、将来に重大な禍根を残す恐れが高い。

準難民という名の外国人労働者?

 今回の「避難民」受け入れの中で、気になったのは、愛知県の国賊知事・大村秀章が「(避難民の)就労の支援もさせていただければと思っております」(4月7日)と言った点だ。

 愛知県は平成の初頭から、日系ブラジル人労働者や、技能実習生を多く受け入れ続けて来た、「外国人労働者受け入れ県」だ。

 難民・準難民を同情から保護しようというのではなく、それを口実にして「安価な外国人労働者が手に入る」という打算的に考えている者の存在は否定できない。

 難民であれば、原則として在留資格は「定住者資格」と同じ就労資格が認められる。入管法上、その就労に制限が設けられておらず、日本人と同様に仕事が出来る。

 労働者を使う側からすれば、技能実習生や日本語学校留学生などよりも「使い勝手」が良いのは間違いない。

難民認定も拡大か

 今までの日本の外国人受け入れの歴史を振り返れば、労働者としての「準難民」の旨味を財界・経営者たちが知れば、政府に対して、「人道的配慮」を口実にして、「政府はもっと難民・準難民の受け入れを拡大せよ」と圧力を掛けるのは目に見えている。

 そうなれば、アフガニスタンやミャンマーなど内戦や混乱の続く国からの受け入れも広がり、中国からも「民主化運動家だ」「法輪功の信者だ」という名目で「難民」の受け入れを拡大していくことも予想される。

 そうなった時には、「難民」名目の労働者を送り出したり、受け入れるブローカーたちが跋扈するのも目に見えている。

 あわい感情論で同情し、十分な議論も無く拙速な「準難民」受け入れは、事実上の「移民受け入れ」と同義であり、「準難民」受け入れの行く末を危惧するものである。