ロシアを見て日本は鎖国できるか考えた(日本国民党代表 鈴木信行)

 ロシアがウクライナに侵攻し、国際社会のあらゆる局面からボイコットされている。経済制裁で金融決済さえ出来ない状況に追い込まれている。それでもロシアが侵略を継続できるとしたら、封鎖されても生き残れる条件を有しているからだろう。つまり鎖国できる条件を有しているということだ。

 鎖国条件としては、ロシアが産油国であることは大きい。食糧を輸入しなくとも国民が生活できるかは大きな条件だ。電力供給のエネルギー源は大丈夫か。兵器の自国生産も入るだろう。水、食糧、原材料、エネルギーの確保が前提ということか。

 ロシア国民は北朝鮮も同じだが、食糧の配給になれている。極寒のロシアは冬が天然の要害になり、ナポレオンもヒットラーも攻めきれなかった国だ。冬の大国ロシアは攻めても手ごわい。そのロシアに攻められても負けない隣国がフィンランドだ。徴兵制を引いているが、幸福指数は世界一と言われている。

鎖国の条件

 米英を始めとする国際社会から非難されているロシアを見て、鎖国について考えてみた。日本はいざとなれば鎖国できるだろうか。

 水は大丈夫だ。水資源はきれいで飲める水が豊富にある。食糧はけっこう大丈夫と考える。先ず主食の米が余っているからだ。野菜の自給率は80%以上だ。贅沢を排除すれば餓死することはないのではと思う。

 日本は原材料を輸入に頼っているから、ここが弱点となる。化石燃料に頼らない新素材の開発と、さらに自然エネルギー開発が必要となる。日本は今後、自給自足、国内調達を高めるための政策を進める必要がある。

 日本は海洋国家であることが、比較的平和の時代を長く保持して大陸勢力の影響力を受けなかった主因である。天然の要害である海により、隔離された環境から他地域の影響が及びにくいのだ。また島国故に島国根性と排他的一面を揶揄されることもあるが、国内の団結力を維持しやすい。災害や緊急事態が起これば、一致団結することに得意な民族性だ。

 日本は海上交通力と海軍力により制海権を握ることで、必要なエネルギーを取得できるだろう。日本の弱点の一つであるエネルギー源確保と原材料確保を、海洋国家の強みを活かしてシーレーン(海上交通路)とチョークポイント(要害)を押さえることにより補えるのではないか。これは具体的には台湾とフィリピンのことである。両国との安全保障協定や貿易協定で連携を強化することだ。中東地域やオーストラリアなどの原油と原材料などを、非同盟国の領域を通過することなく自由な交易ができて、エネルギーを確保できることが理想だ。そのためには日米安保だけではなく、価値観を共有する国家との多国間安全保障が日本には必要だ。

鎖国の可能性

 ロシアを題材として、日本は鎖国できるかとの問いについての答えは、現状では無理だ。だが潜在的には鎖国体制を構築できる可能性はある。水は確保出来る。食糧も主食は大丈夫だ。原材料は輸入と開発が必要だ。エネルギーの自国生産は難しいが、多国間安保で補える可能性はある。

日本列島と中国大陸

米国対中国金融主導権争い

 今後の日本は、世界情勢がいかなる状況となっても、いざとなれば自給自足できる体制を目指しておく必要がある。ロシアによるウクライナ侵攻が終戦となれば、米国が中国を金融経済で破滅へと追い込む経済戦争が進むことだろう。米国・英国が国際ルールを作り基軸通貨と金融覇権を握っている。米英に挑戦しているのが中国で、これがデジタル人民元だ。

 海洋国家である日本の立場は、米英に与する以外、他に選択肢はない。もし米国が中国との金融覇権争いに負ければ、日本は中国から強烈な制裁を受けるだろう。中国海軍にシーレーンを奪われ、世界中華帝国体制からのけ者にされる可能性がある。日本が中国に屈せず耐えるには、自給自足と自主国防体制の構築以外にはない。大東亜戦争後に、米国の強い影響力の下で建国した韓国だが、今後は地理的条件から大陸勢力である中国側に与することになる。すでに中国側に組み込まれているといってもいいだろう。

 その表れの一つに、韓国は米国の半導体同盟入りを拒否した。台湾のTSMC、日本の半導体各社、米国のインテルなど世界の半導体技術をリードするメーカーで連合し、次のサプライチェーンを構築して中国を排除することが米国の思惑にある。

 ところが韓国のサムソンとSKは中国側に入り、米国の半導体同盟から外れる。中国からの報復を恐れて、米国には与しないのだ。韓国の将来について予言しておくが、在韓米軍が撤退したら大韓民国は消滅する。力による現状変更が現実のこととなるだろう。

鎖国を目指す国づくり

 日本が米中覇権争いの結果、例え勝者側で利益を得たとしても、将来は鎖国できる国づくりが必要と考える。決して鎖国を目指しているのではないが、シナ大陸からの孤立を恐れず国を守る決意を国民が共有し、日本もいざとなれば鎖国できる体制を作る努力が必要だ。

 日本企業が海外進出してのグローバル化に乗り遅れたら日本は衰退するのだろうか。外国人労働者を受け入れて多文化共生しなければ、国内産業は衰退するのだろうか。グローバル化や多文化共生という言葉に浮かれているようでは、国家戦略百年の計を見誤る事になる。

 ロシアのウクライナ侵攻は、この原稿を書いている時点では先行きは見えていない。だが、ロシアが国際社会から非難されてもしぶとく継戦できているとしたら、産油国でもあるロシアは、孤立しても生き残れる条件を備えているからだ。水、食糧、原材料、エネルギーの確保ができる国は強い。米国が最も好条件にあることは、疑う余地はない。

(日本国民党代表 鈴木信行)