カンボジア国籍剥奪法の問題

 カンボジアは九月五日に国益に反した自国民からカンボジア国籍を剥奪できる「国籍剥奪法」を発効したと発表した。

 二重国籍者や帰化人ではなく、出生による生粋の自国民から国籍を剥奪する法律の制定はかなり異例のものだ。

 「反日売国奴なんか国籍を剥奪してしまえ」と言っている我が国の愛国者からすれば、「羨ましい」と思うかもしれないが、この問題は日本と無関係ではない。

 現在、カンボジアではフン・セン上院議長の率いる「カンボジア人民党」が野党の野党・キャンドルライト党への弾圧を強めている。与党を批判しただけで有罪になった事例も生じている。同様に与党批判が「国益に反した」として国籍剥奪となる可能性は高い。

 問題なのは、日本に住むカンボジア人が、国籍が剥奪されて「無国籍」になってしまう事態だ。在日の「元カンボジア人」は、犯罪をしてもカンボジアに強制送還できなくなる。

 現在、在日カンボジア人は約三万人おり、増加の一途をたどっている。それどころか、無国籍となった元カンボジア人同士の子供には、日本国籍が付与されてしまう。(国籍法第二条の三)

 「民主化・自由化」を求めてカンボジア政府批判の運動を展開する在日カンボジア人活動家たちは、そこそこの数がいる。都内で開催された政府批判のデモには約三百人のカンボジア人が参加している。

 今回のカンボジア政府による「国籍剥奪法」は在日カンボジア人の難民認定の確率にも影響を与える。

 もはや、カンボジアの事実上の「棄民政策」が日本に影響を及ぼすのは時間の問題だろう。