全国初・拉致啓発条例施行 立役者の瀬沼剛足立区議に聞く

瀬沼剛足立区議

瀬沼剛足立区議

 「足立区議会拉致問題議員連盟全員が、非道な北朝鮮による拉致問題に対する解決の一助となることを願って提案する」――7月9日、足立区議会の議場に瀬沼剛足立区議会議員の声が響き渡った。

 そして、「足立区拉致問題等啓発推進条例」は全会一致で可決。7月12日に施行された。北朝鮮による拉致問題の啓発を目的とした条例はこれまで把握されておらず、全国初のケースと見られる。

 本紙編集部は条例制定の立役者である拉致問題議員連盟会長の瀬沼区議に話を聞いた。

「啓発」の「推進」が全会一致のカギ

 まず、拉致問題は国が定める人権課題です。その「啓発」を「推進」するとなれば、誰も公に反対することはないと考えました。結果的に、日本共産党や無所属にもご賛同いただけた。

 7月25日の区報で一面を使い条例を紹介。拉致問題を風化させないようにポスターや横断幕も作っていくし、来年には啓発を目的とした区民大会を開いていきたい。救う会とのコネクションも活かし、意義のあるものにしたいですね。

試行錯誤

 今回施行された条例は全四条から構成される短いもの。当初は、「拉致問題担当課」の新設も考えていましたが、予算などの事情もあり、すでにある「組織の機能強化」で合意しました。

 議会を全会一致で通して近藤弥生区長も「頑張りましょう」ということになりました。

 そして、いざ区報で紹介という段階で今度は、総務省から足立区にストップがかかった。区報には横田めぐみさんのポスターを掲載する予定だった。早い話、「勝手に国の資料を使うな」ということなのでしょう。おかしな話でしょう。国会議員を通じて、「国の思いを自治体がさらに広めようという時に、どういうことなんだ」と伝えていただいた。

 その後は、何度も国の官僚と交渉し、最終的に使えることになったが、国は拉致問題に本気なのか…もちろん、担当者の立場もあるだろうが、心から取り組んでいるのか…マスコミも取材に来たのは産経新聞以外だと、共同通信と都政新報くらいだ。まだまだ、啓発が出来ていない。浸透していないと痛感した。

これから、始まる!

 いままで足立区は12月のパネル展示とアニメ「めぐみ」の上映が主たる啓発事業だった。私自身、小中学校でも上映するところは、なるべく足を運んでしっかりと授業内容を見させてもらった。その時に、生徒児童の感想文を読ませてもらうが、拉致事件の悲惨さについては理解があると感じた。しかし、「救う立場」になりたいといったものは見受けられない。先生の教え方もあるだろう。ある学校では、アニメ上映の後、横田早紀江さんの手記を薦めている先生もいて、称賛させていただいた。

 今後は、効果のある啓発教育に取り組みたい。条例のおかげで「めぐみ」も再三再四上映してくれと言いやすくなった。

担当係長を設置!

 小室晃総務課長兼拉致問題等啓発推進担当係長も取材に応じ、「足立区独自のポスターデザインは8月中には仕上げたい」と話し、完成後は、区有施設や公共施設に限らず、「若者の拉致問題への意識が薄いとの指摘もある。区内6大学への掲示も依頼する」と意欲を示した。

 最後に、「区としても条例の思いを受け止めたい。今、拉致被害者家族の高齢化が進んでいる。『積極的に』取り組みを進めたい」と述べた。

瀬沼区議、戦いの歴史

 平成14年、「拉致被害者支援法」が制定された年に、瀬沼区議は議場で教育現場に拉致問題が取り上げられているかを問いただした。この時の区は「取り入れている学校もある。これからさらに充実させる」と答弁した。その後も、北朝鮮当局との密接な関係が指摘される朝鮮学校に対する補助金支出問題や、小中学校におけるアニメ「めぐみ」の上映促進など拉致問題の早期解決を目指す、瀬沼区議の志は、議事録から垣間見ることができる。そして、議場で拉致議連結成を呼び掛け、定数45人のうち、35人が集まり結成することになった。

 そして、瀬沼区議肝煎りの拉致条例は特別区議会議長会において、古性重則足立区議会議長から全区に紹介された。

足立区を橋頭堡にさらなる展開を!

 拉致事件が「問題」として認識され40年以上の時が過ぎた。被害者家族の高齢化や問題の風化が年々深刻化していく中で、政府主導の拉致対策を支援する新たなうねりが、地方議会の拉致議連であり、啓発を推進する各地方行政の存在だ。

 残された時間は少なく、課題は山積している。拉致被害者、その家族に寄り添う今回の条例制定を歓迎するとともに、新しい動きを期待したい。


瀬沼剛足立区議

足立区議会議員 瀬沼剛(せぬま・ごう)

 昭和62年に足立区議会議員初当選(以降9期連続当選)。

 足立区に生まれ、足立区で育ちました。不器用に、けれども実直に。区民のために、東京のために、この国のために、八期32年、がむしゃらに奔走してまいりました。これからも、情熱をもって闘い続けます。

 拉致問題の解決に真摯に取り組んでいます。教育現場でも今起こっている危機として拉致問題についてを取り上げ、子供達に伝えていくべきです。国民が他国に拉致されているのに黙っている政治家や、仕方がないという人々は、本当に国の危機であると理解しているのでしょうか。心から被害者家族を心配し、寄り添うことを訴えます。

 公式サイト senumago.com