東日本大震災から十年に考える 減災は「減物」から(党本部事務所長 金友隆幸)

 三月十一日で東日本大震災から十年を迎える。いま党には当時小学生だったという党員たちも入ってきており、時間の流れの速さを感じさせる。

 東日本大震災の時、党本部がある東京は震度5の地震に襲われた。震災直後の事務所に駆け付けると、物が倒れ、棚から荷物が飛び出し、落下物でパソコンが破損し、皿が割れたり、チラシや書類が散乱し、まさにメチャクチャな惨状だった。日本で「防災・減災」の意識が飛躍的に高まる大きな切っ掛けになったのではないだろうか。

 それからというもの、事務所の書類はほぼスキャンしてPDFにして、不要な書類やファイルは大量に廃棄した。実に数百キロ分は書類を廃棄したのではないだろうか。そして、そんな書類を収めていた大型スチール書庫やスチールロッカーなどのオフィス家具、収納用品も大胆に処分した。おかげで事務所は以前よりもかなり広くなったし、物を探す手間も格段に減ったし掃除も楽になった。

 そして先日二月十三日、福島県沖を震源とするマグニチュード7の地震が発生した。もちろん震度の差もあるが、十年前と違い、党本部事務所には全く被害が発生しなかった。

 平成7年に発生した阪神大震災では、負傷者の内、48%は家具・電化製品の下敷きになったもので、棚からの落下物による負傷は15%、実に7割ちかくが自分の部屋の家具や荷物で怪我を負っているのだ。

 事務所で考えてみれば、大量の書類を収納したスチール書庫など、数百キロの重量に達する場合があるが、そんなものが勢いよく倒れてくれば人間などひとたまりもない。しかもそこに収納されているもののほとんどが、デジタルデータとして保存できてしまうものであるとしたら馬鹿馬鹿しい話ではないだろうか。

 民家でも樺材の箪笥など100キロを優に超えるものがあるが、地震が発生すればそれらが凶器となって持ち主に襲い掛かってくる。

 政府の地震調査委員会は南海トラフ巨大地震が30年以内に起きる確率を「70%から80%」と予測している。これは「起きるもの」として備えなければならない。

 家庭や職場にある大きな収納用品や無駄なものを減らすことは、必ずや、地震があった時、危険性を減らし、生き延びる確率を上げることにつながっている。今から身の回りを再確認して災害に備えていこう。

(令和3年 しんぶん国民3月号)